立川 インプラントを映し出す鏡

呈示された手形が形式不備,満期末到来,除権判決確定,依頼返却など,適法な呈示でない場合(「0号不渡事由」)。 上記@,Aの場合には,銀行(支払銀行および持出銀行)は不渡届を手形交換所に提出するが,Bの場合は不渡届の提出を要しない。
不渡届が提出されると,これに対し異議申立てまたは取消がないかぎり,交換所は手形債務者の氏名等を「不渡報告」に掲載し加盟銀行に通知する。 その後6ヵ月内に2度目の不渡届が提出されたときは,異議申立て・取消のないかぎり,手形債務者を取引停止処分に処し,「取引停止報告」に掲載し加盟銀行に通知する。
手形は金銭支払の手段として機能するため,適時に現金化されなければならない。 そこで,債務者が手形上の債務を任意に履行しないときは,債権者に,手形訴訟による手形上の権利の迅速な実現がはかられている(民訴350条以下)。小切手訴訟は手形訴訟の規定を準用する(民訴367条2項)。
通常の訴訟手続に比べて,手形訴訟は次のような特色を持っている。 すなわち,@証拠が原則として書証に限られ(民訴352条1項),A勝訴判決には必ず仮執行の宣言をつけなければならず(民訴259条2項),B手形訴訟判決に対しては原則として控訴が許されない(民訴356条)。
以上は,迅速な訴訟と権利実現の強化を目的とするものである。 手形訴訟を利用できるのは,手形による金銭の支払の請求とこれに付帯する法定利率による損害賠償の請求を目的とする訴訟に限られる(民訴350条1項)。手形訴訟では,被告の裁判籍所在地の裁判所のほか(民訴4条),手形の支払地(手1条5号.75条4号)を管轄する裁判所にも訴えを提起することができる(民訴5条2号)。手形訴訟を請求するには,手形(小切手)の写しを添付して(民訴規55条1項3号・2項),手形訴訟による審理および裁判を求める旨を訴状に記載しなければならない(民訴350条2項・367条2項)。

手形訴訟の審理は,迅速でなければならない。 証拠調べは原則として書証(手形その他の文書)に限られ(民訴352条1項),人証と証人尋問または鑑定もしくは検証はまったく許されない。
例外として,文書の成立の真否に関する事実または手形の呈示に関する事実については,当事者本人を尋問することができる(同条3項)。 また手形訴訟では,被告は反訴(民訴146条)を提起できない(民訴351条)。
他方,たとえば請求原因の立証が書証だけでは不十分であると思われる場合,原告は,口頭弁論が終結するまで,被告の承諾を得ないで,訴訟を通常訴訟に移行させることができる(民訴353条1項)。 原告勝訴の場合,裁判所は原則として職権により担保を立てないで仮執行できることを宣言しなければならない(民訴259条2項本文)。
よって,原告は直ちに強制執行ができる(民執22条2号)。 権利実現の強化が図られる。
原告敗訴の場合には,この判決に対して控訴は許されないが(民訴356条本文),その判決を下した裁判所に異議を申し立てて通常の手続に移行させることができる(民訴357条本文)。 適法な異議の申立てがあると,訴訟を口頭弁論終結前の状態に戻し通常の訴訟手続に従ってやり直すことになる(民訴361条)。
手形上の権利は債権であるから,債権の消滅に関する民法の一般原則が手形上の権利にも適用される。 したがって,手形上の権利は支払(弁済),相殺,更改,免除などによって消滅する。
その他,手形上の権利は時効(手77条1項8号=70条)によっても,遡求権保全手続の欠鉄(手77条1項4号=53条)という手形法に特有の消滅事由によっても消滅する。 手形の消滅時効も時効制度としては民法上の消滅時効(民144条以下・166条以下)と異なるところはないが,手形法は,時効期間(短期の消滅時効,手77条1項8号=70条)と時効中断(手77条1項8号=71条.86条)について特則を設けている。

手形債権の時効期間が一般の債権に比べて短くなっているのは,手形債務者が一般の債務者よりも厳格な債務を負担しており,手形上の法律関係を速やかに終了させる必要があるからであるといわれている。 (a)主たる債務者に対する権利約束手形の振出人(その保証人や無権代理人を含む)に対する権利は,満期の日から3年で時効消滅する(手77条1項8号=70条1項・32条1項・8条)。
時効は満期日から進行するが,その期間の計算は初日不算入の原則(手77条1項9号=73条)により,満期日の翌日から計算する。 一覧払手形は支払呈示の日が満期日となるので(手77条1項2号=34条1項),所持人が支払呈示をした日を基準にして時効期間を計算する。
所持人が呈示期間内に呈示しない場合には,振出日から1年を満了した日が満期日となり,この日から時効が進行する(手77条1項2号=34条1項参照)。 手形外で支払猶予の特約がなされた場合でも,手形に記載された満期が変更されない限り,時効は手形記載の満期日より進行するとする学説もあるが,判例は,所持人と裏書人との間で裏書人の手形上の債務につき支払猶予の特約がされた場合には,消滅時効は猶予期間が満了した時から進行すると解している(最判昭55.5.30民集34.3.521)。
(b)裏書人(遡求義務者)に対する権利これは,遡求の場合と再遡求の場合とで異なる。 所持人の裏書人に対する遡求権は,支払拒絶証書を作成したときは,その作成の日付から1年で,また,作成が免除されているときは満期日から1年で時効消滅する(手77条1項8号=70条2項)。
遡求義務を履行した者の前者に対する再遡求権は,手形を受け戻した日または訴えを受けた日(訴状送達の日)から6カ月で時効消滅する(手77条1項8号=70条3項)。 権利の上に眠る者は保護されないが,権利者が請求やその他権利行使の意思があることを明らかにすれば,時効の進行は停止する。
これを「時効の中断」という。 手形の時効中断事由については,手形法が特に規定を設けている「訴訟告知」(手86条)のほかは,民法の規定(民147条)による。
(a)債権者による請求これには,裁判上の請求(訴えの提起)と裁判外の請求(催告)とがある。 裁判上の請求の場合には,手形の呈示がなくても訴えの提起があれば時効中断の効力が生ずる。また,権利者が手形を所持しないままで債務者に対して訴えを提起した場合も,時効中断の効力を認めている(最判昭39.11.24民集18.9.1952)。
裁判上の請求(訴えの提起)は,手形債権者としての権利行使の意思が客観的に表現されたものであるから,手形の所持や呈示がなくても時効を中断することができる。 ただし,時効中断の効力を生じさせるには,訴訟の提起時点において手形の所持ないし呈示を要しないというだけであり,請求者が勝訴判決を得るためには口頭弁論終結時までに手形の所持を回復するか除権判決を得なければならない。
裁判外の請求(催告,民153条)の場合にも,手形の呈示は必要ではない(通説。 最大判昭38.1.30民集17.1.99)。
催告をした権利者はもはや権利の上に眠る者ではなく,催告により権利行使の意思が客観的に表されているので,催告による時効中断には,手形の呈示を必要とする理由はない。

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